ブックスキューブリック

d0073690_22111048.jpg仕事に行詰っていた頃、ボクは何であんなにも書店で働くことを切望していたのだろうか?そんなことを考え、悩んでいた。そして、それを思い出すために、まずはボクが無条件で好きだった書店めぐりを再開しようと思った。そして、どうせ巡るのなら行った書店について一言でもいいから何か書き留めて、書店人としての自分の財産にしよう。そう決めてこの回遊記を始めた。4ヶ月ほど前からひっそりと始めた書店巡りも、多いのか少ないのか、30店舗目を迎えた。本当は、前回の丸善の後に4店舗ほど先に見ているのだが、30回記念?として、どうしてもこのブックスキューブリックを紹介したかった。

#30 ブックスキューブリック
福岡県2 福岡市2
福岡市中央区赤坂2丁目1−12
092-711-1180

九州の旅最終日の4日目。疲れはピークだったのだが、この日のボクはそんなものは気にしない。なぜなら、この九州の旅を決定した時に、観光地よりも先に行く場所として決めた書店、ブックスキューブリックが本日の行き先だからである。と言っても、今までの傾向から言うと、ボクが期待すればするほど期待値が高すぎてそのギャップに苦しむ傾向があるので、奥さんからは「そんなに期待しすぎないの!落ち着きなさい」と窘められていた。

この日は、前日までの肌寒さもなく快晴。
福岡城跡地を抜けて、けやき通りに出る。
なんだか洒落た通りだ。先月行った表参道を彷彿させるけやきの並木道。
そんな洒落た通りに面してブックスキューブリックはあった。
まずはお店の外観を・・・。
おぉっ!なんかいいぞ!敷居が高すぎないお洒落さだ(これ重要)。
お店の外観で、ボクの期待値は更に上昇。
落ち着かなければ。。。

店内に入るとすぐに、床の木が心地良くスーッと香る。
そして、ゆったりとしたボサノバが程よい音量で鳴っている。本当に心地良い。
15坪程の店内は、入口から全てが見渡せる。入って正面に新刊文芸書、ノンフィクションなどがあり、左手には総合情報誌。新刊の奥の台は女性誌とビジネス誌。奥の壁面に女性実用が並び、子育て、教育、人文社会、新書、文庫とレジに向かって並ぶ。入口右手の少し奥まったスペースには建築、デザイン書、写真集などがセンスよく陳列。こうやって見ると、15坪程とはいえ総合書店なのである(コミックと学参はない)。う~ん、なんだかすごくいいぞぉ。。。
ここで、前回の丸善の回でも挙げた、ボクの最新「理想の書店像」がガチッっと音を立ててブックスキューブリックとリンクした。

そう、キューブリックはわずか(既にわずかと言っていいのか絶妙と言うべきか悩む)15坪程ながら、素晴らしい書店だった。それは、店内の本を見るとわかる。全ての本に、スリップが2枚重なっており、これは出荷時のデフォルト(版元のスリップ)と取次(キューブリックはトーハンだった)の電算スリップ。つまり店内の書籍(雑誌は除く)は全て注文品なのである。おそらく、新刊ルートでの入荷は無くし、店内の本は全て自ら選ぶというスタンスでの書店運営にしているのだ。

自分が選んだ本だけが並ぶ書店。

素敵な響きだが、コレをやるには本当に手間を掛け、本と書店に対する知識と愛情と情熱が無ければ絶対に成立しない。それが、ここキューブリックでは素晴らしいレベルで成立していた。ボクも棚から何冊本を抜いて開いたことか。わずか3スパンしかない文庫の棚も、端から端までじっくりと見入ってしまった。硬い内容の本もあれば、雑学もあり、もちろん小説もある。おそらく店主が気に入っているのだろう、小説では川上弘美、角田光代、吉田修一、村上春樹などはほぼ全点揃っていた。

全体のバランスを見ると女性向けの本が多く、実際にボクが居た間も女性客が多かった。しかし、ターゲットは女性か?と言われたらおそらく違うだろう。ターゲットは近所に住む人々。みたいな感じじゃないかな。つまり書店はご近所商売という事をしっかりと踏まえた店作りをしているのだ。女性向けの本が若干多いのは、女性が安心して入店できるお店、という意味を込めた品揃えではないだろうか。ボクはそう感じた。

年間1000店舗近くの書店が閉店している。
その大半は所謂町の書店だ。お店の規模としたら、まさにこのキューブリックと同じである。町の書店が閉店する理由に、書店の巨大化が原因とされているが、そればかりではない気がする。変化と進化がないから衰退するのではないか。そう簡単に言うな!と言う気持ちもわかるが、ボクだって自分のお店を魅力ある書店にする為に必死だ。膨大な品揃えという武器がない書店にとって変化と進化は闘う為の必須条件だと思う。それがなければ、15坪でも100坪でも300坪でも閉店に追い込まれるのではないか。

例えば、200坪の書店の在庫がいったい年に何回転するのか?1年に1回も売れない本のほうが多いのではないか?そう考えたら、わずか15坪の書店でも、入念に選んだ本によって回転率を上げ、入れ替えを繰り返し鮮度を保つことによって、200坪の書店にも匹敵するような書店にすることも不可能ではない気がする。

今回、1000坪級の書店を3店舗見たが、確かに品揃えといった点においては見たこともない本に出会ったりし、大変楽しめる。だが、ゆっくりとお店全部を見れるのかと言われたら否。本を見る楽しさはあっても、その箱である書店そのものを楽しむことはできない気がする。そのような観点から考えても、時代に逆行しているかのように見えるキューブリックはある意味最先端なのかもしれない。このような書店が、全国各地で見れるようになると、また本全体の売れ行きが上向きになるのかもしれない。そして、ベストセラーの販売部数のみが伸び続けるといった異常現象もストップするのかもしれない。

う~ん、あまりの感動でなんだか色々と書きすぎてしまいましたが、ブックスキューブリック。
今まで見た書店の中で、ボクのNo.1でした。
久しぶりに、本と書店という空間を一緒に楽しめました。
そして、何よりも居心地が大変よかった。
浜松から遠く福岡まで見に来た甲斐がありました。
また福岡に行ったら必ず行きます。
どうもありがとう。

結局キューブリックでは5冊購入。
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ブックスキューブリック
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by pilotfish73 | 2006-09-30 01:00 | 本屋回遊記


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